コラムvol. 7 「幼児オイリュトミー」

調和と健やかな成長を促す


オイリュトミーとは、ギリシャ語で「調和のとれた美しいリズム」という意味です。
幼児オイリュトミーは、「わたし」と自分のことを言える3歳くらいの時期から始めます。お子さんたちが次回のオイリュトミーを楽しみに待つという時間を置けるよう、週に1度行います。オイリュトミーをする時間は、20分前後で、最後に星々の音楽を心の奥深くで聞きながら、静かに休みます。
幼児さんは、オイリュトミストが行う動きを模倣して、夢見る雰囲気の中、物事への愛や喜びから生じたイメージをシンプルな音の響きやリズムの要素で何度も繰り返し、生き生きと動きます。
模倣することと、繰り返し行うことは、生命力体を強め、その後の成長過程で、この力は、思考へ 意志へ そして生きる力へと変容していくと言われてます。
お話や詩のイメージを味わいながら聴くと共に、心と身体を動かしてオイリュトミーを動く体験は、能動的に聴いて、主体的に動く体験をもたらし、それは、調和と健やかな成長を促します。

子音の「B」の音


幼児オイリュトミーでは、子音のBの音を多く動きます。乙女座の星座と関係するこの子音は、心身を保護する覆いを与え、幼児期に特に大切な感覚である保護され、護られているという体験をもたらします。シュタイナー幼稚園のお部屋には、ラファエロのシスティナのマドンナの絵がよく飾られています。マリアさまが青のマントで幼子イエスを抱く姿は、まさにBの本質的な体験と言うことができるでしょう。

畏敬の念、生きる力を育む


またこの時期に、畏敬の念を育てることも大切にしています。例えば、大地をしっかり踏みしめて歩く象に、風に乗って自由に飛ぶ鳥に、海流に乗って泳ぐ魚になって動きます。それは、世界に出会い、そのものとなって帰依して動くこということであり、地上に共に生きる物を慈しみ、地球が私たちのホームというような感覚を意識下に体験し、育んでゆきます。

オイリュトミー療法士の立場から、特に大切に思うことは、お子さんたちが自分の身体を心地よい住処、家として、人生をしっかりと歩めるよう助力していくことです。
そのために、お子さんたちとたくさん足を使って動いたり、また自分の身体を心地よく感じられるように、例えば石になって、背中を床につけて、両脚を抱えてコロコロと転がったり、頭から足までリズミカルな詩で自身の身体を優しく触ったりすることで、身体を温め、身体を愛し、手の先、足の先、身体の隅々まで感受することができるように働きかけます。

あるクラスのお子さんは、お母さんに「〜ちゃんは、何が一番大切?」と聞かれ、「わたしのからだ」と答えたそうです。
主体的にオイリュトミーを幼児期に動くことは、生きる力を育むことでしょう。そして、身体の疎外化が進む現代にとって、オイリュトミーを深く体験することがとても大切なことである、と痛切に感じてやみません。

参考文献:「オイリュトミーの世界」水声社

プロフィール
駒野 晃子 
カナダの教員養成コースで幼児教育を学ぶ。その後、イギリスのキャンプヒルオイリュトミー学校でディプロマを取得。2010年に帰国。2011年の震災後に活動を開始。2018年英国でオイリュトミー療法士資格を取得。現在オイリュトミー療法士として、健康オイリュトミークラスやオイリュトミー療法、また北海道伊達や、帯広のフリースクール、帯広や江別の土曜オイリュトミークラスを担当。札幌在住。

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